『グッドナイト&グッドラック』

2005年 アメリカ
監督・出演:ジョージ・クルーニー
出演:デヴィッド・ストラザーン、ロバート・ダウニーJr.
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 彼はエド・マロー。42年前にこの世を去った男は、報道番組「シー・イット・ナウ」のニュースキャスターだった。番組製作者のフレッド・フレンドリーとともに作り続けたこの番組は、取材力の高さと鋭い切り口、そして簡潔かつ力強いマローの語り口によって、多くの支持を得た。
 1953年、時は米ソ冷戦下。ハリウッドは、共産主義の脅威から国を守るという名目で行われる赤狩りの恐怖におびえた。恐怖はマッカーシー上院議員の登場で、全米へと広がる。根拠の有無にかかわらず、疑惑があるだけで多くの人々が不当に攻撃され、密告され、職を追われた。メディアはマッカーシーの報復を恐れ、沈黙を守る。そして恐怖はマローや番組スタッフにも、着実に忍びよる。
 マローはマッカーシーに立ち向かうことを、「狭い門から入る」ことを決断する……。

 マローは視聴者に、「恐怖で目を曇らせてはいけない」「これ(恐怖による集団ヒステリー状態)は彼1人の責任でしょうか? 彼は恐怖を生んだのではなく、利用しているに過ぎない。(シェイクスピア作『ジュリアス・シーザー』の)カシアスの言う通り、悪いのは運命の星ではなく、我々自身なのです」と訴えている。法や人権を無視するマッカーシー、彼を前に沈黙するメディアと視聴者。責任は皆にある。マローはそう語りたかったのか。
 『ニュースキャスター エド・マローが報道した現代史』(田草川弘著、中公新書)の中で、フレンドリーは語っている。「マローには他の誰にもない二つのものがあった。一つは完全に独立した編集権。もう一つは他人の身になって苦しみや痛みを思いやる優しさだ」。
 メディアと視聴者に対して、「真の報道のあり方」を訴え続けたマロー。彼は今でも、「放送の良心」と呼ばれている。

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狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない。
マタイによる福音書 7章13節〜14節



   

日本キリスト教団出版局『信徒の友』2007年8月号 「ビデオをみる」より転載
この転載については、日本キリスト教団出版局の許可を得ています。
日本キリスト教団出版局 公式サイト :  http://www.bp.uccj.or.jp/index2.html

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