『9000マイルの約束』

2001年 ドイツ
監督:ハーディ・マーティンス
出演:ベルンハルト・ベターマン、ミヒャエル・メンドゥル

 私はリサ。うちはママと弟の3人暮らし。パパは……、今はいない……。
 1944年8月、パパは戦場へ行った。クレメンス・フォレル。それがパパの名前。中尉だったの。あの日はバイエルンの駅まで、ママとお見送りに行った。列車に乗ろうとするパパに、ママは赤ちゃんができたことを教えたわ。私は絵はがきを送ってねって頼んだ。そうしたらパパは言ったの。「クリスマスまでには戻る!」 それがパパを見た最後。
 1945年10月、パパは行方不明だった。どんなに調べても分からなかったの。ママは辛そうだった。だから私、マリアさまにお願いしたわ。「パパをおうちに帰してください」
 今日は1952年のクリスマス・イヴ。これから家族3人で教会に行くところ。ねぇパパ、あの時の約束を覚えている? 「クリスマスまでには戻る!」 私は覚えているわ。

 第二次世界大戦後。クレメンスは戦犯として、シベリアの強制収容所に移送された。仲間が次々と倒れていく中、妻カトゥリンと娘リサと交わした「必ず帰る」の約束を胸に、収容所を脱走。そして本当の試練が始まる。ドイツまでの9,000マイル(14,484キロメートル)を横断しなくてはならない。前には自然の荒波、背後にはソ連軍の追跡。彼には多くの試練が待っていた。そんな時、救いの手を差し伸べたのは、ユピックの人々やユダヤ人など、人種も宗教も異なる人々だった。
映画ではたびたび、祈る場面が出てくる。食料が尽きた時、恐怖から罪を犯した時、クレメンスは主に祈り、許しを乞う。リサも父の無事を祈る。
ラスト。クリスマス・イヴの教会では、聖歌隊が『マリヤはあゆみぬ』を歌う。「主よ、あわれんでください」 それはクレメンスたちの祈りでもあったのだ。


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『マリヤはあゆみぬ』は中世末期に作られたドイツ・カロルで、讃美歌第2編に収められている。
胸に幼子イエスを抱き、茨の森を進み行くマリアを想い、作られたこの讃美歌には、「Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ」の言葉が何度も繰り返されている。

日本キリスト教団出版局『信徒の友』2007年12月号 「ビデオをみる」より転載
この転載については、日本キリスト教団出版局の許可を得ています。
日本キリスト教団出版局 公式サイト :  http://www.bp.uccj.or.jp/index2.html

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