『ナルニア国物語
/第1章:ライオンと魔女』

2005年 アメリカ
監督:アンドリュー・アダムソン
出演:ウィリアム・モーズリー、
    アナ・ポップルウェル
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過去は過去だ。過ぎたことを話す必要はない。
 ── ナルニアの創造主 偉大なる王アスラン
  
 第2次世界大戦下のロンドン。ペベンシー家の子供たち、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーは戦火を逃れ、田舎に住むカーク教授の屋敷に疎開する。ある日、屋敷を探索していたルーシーは、空き部屋に置かれた大きな衣装ダンスを発見する。扉を開けると、そこは不思議な生き物たちが暮らす神秘の国ナルニアへと繋がっていた。
 王アスランが作ったその美しい国は、冷酷な白い魔女によって春を奪われ、100年の冬に凍えていた。ナルニアの住人が待ち望むもの。それはアスランの帰還と、ナルニアを救うといわれる2人のアダムの息子と2人のイヴの娘の出現。兄妹は自分たちこそが、ナルニアの運命を背負う4人だと知るのだった。

 この作品はC・S・ルイスによるファンタジー文学「ナルニア国物語」の1作目にあたる、『ライオンと魔女』を映画化したもの。
 「ナルニア国物語」は、そのストーリーに聖書の言葉を多く用いていることでも有名だ。そのひとつが、「放蕩息子の帰還」のたとえ話。懸命に弟妹の面倒を見ようとする長男ピーターに反抗する次男エドマンド。彼は魔女の甘言に唆され、兄妹から離れ、魔女の館に向かってしまう。しかし彼女の本性を知って恐怖に怯える。アスランの側近に救出されると、彼は己の身勝手さを悔い、許しを請う。その時、アスランが兄妹に発したのが冒頭の言葉だ。作者ルイスは、父なる神やイエスになぞらえ、アスランを作り出したといわれる。
 日々、その御心に反した行動をとり、また、その御心に気づくことのできない私たち。しかし神は、私たちをお見捨てにならず、いつでも一緒にいてくださる。そのことを思い出させてくれる一場面だ。
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 また、イエスは言われた。「ある人に息子が二人いた。弟の方が父親に、『お父さん、わたしが頂くことになっている財産の分け前をください』と言った。それで、父親は財産を二人に分けてやった。何日もたたないうちに、下の息子は全部を金に換えて、遠い国に旅立ち、そこで放蕩の限りを尽くして、財産を無駄遣いしてしまった。何もかも使い果たしたとき、その地方にひどい飢饉が起こって、彼は食べるにも困り始めた。それで、その地方に住むある人のところに身を寄せたところ、その人は彼を畑にやって、豚の世話をさせた。彼は豚の食べるいなご豆を食べてでも腹を満たしたかったが、食べ物を呉れる人はだれもいなかった。そこで、彼は我に返って言った。『父のところでは、あんなに大勢の雇い人に、有り余るほどのパンがあるのに、わたしはここで飢え死にしそうだ。ここをたち、父のところに行って言おう。「お父さん、わたしは天に対しても、またお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。雇い人の一人にしてください」と。』 そして彼はそこをたち、父親のもとに行った。ところがまだ遠く離れていたのに、父親は息子を見つけて、憐れに思い、走り寄って首を抱き、接吻した。息子は言った。『お父さん、わたしは天に対しても、またお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。』 しかし、父親は僕(しもべ)たちに言った。『急いでいちばん良い服を持って来て、この子に着せ、手に指輪をはめてやり、足に履物を履かせなさい。それから、肥えた子牛を連れて来て屠りなさい。食べて祝おう。この息子は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったからだ。』 そして、祝宴を始めた。
 ところで、兄の方は畑にいたが、家の近くに来ると、音楽や踊りのざわめきが聞こえてきた。そこで僕の一人を呼んで、これはいったい何事かと尋ねた。僕は言った。『弟さんが帰って来られました。無事な姿で迎えたというので、お父上が肥えた子牛を屠られたのです。』 兄は怒って家に入ろうとはせず、父親が出て来てなだめた。しかし、兄は父親に言った。『このとおり、わたしは何年もお父さんに使えています。言いつけに背いたことは一度もありません。それなのに、わたしが友達と宴会をするために、子山羊一匹すらくれなかったではありませんか。ところが、あなたのあの息子が、娼婦どもと一緒にあなたの身上を食いつぶして帰って来ると、肥えた子牛を屠っておやりになる。』 すると、父親は言った。『子よ、お前はいつもわたしと一緒にいる。わたしのものは全部お前のものだ。だが、お前のあの弟は死んでいたのに生き返った。いなくなっていたのに見つかったのだ。祝宴を開いて楽しみ喜ぶのは当たり前ではないか。』」
ルカによる福音書 15章11節〜32節
日本キリスト教団出版局『信徒の友』2008年4月号 「ビデオをみる」より修正・転載
この転載については、日本キリスト教団出版局の許可を得ています。
日本キリスト教団出版局 公式サイト :  http://www.bp.uccj.or.jp/index2.html
  

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